梅村さえこ-日本共産党党中央委委員・子どもの権利委員会副責任者
くらし・税・TPP

自治体窓口の外部委託/住民施策の後退に/人件費減で「官製ワーキングプア」

 地方自治体の窓口業務について、地方独立行政法人(地方独法)に外部委託できるとした地方自治法などの改定が、先の通常国会で成立しました。住民の権利や生活を保障するために必要な施策につなげる重要な窓口業務。外部委託によって、自治体の機能と役割に深刻な後退につながる危険があります。(行沢寛史)

 改定された地方自治法・地方独立行政法人法では、地方自治体で実施している20の窓口での対応業務(別表)を自治体業務から切り離し、自治体が出資、設立する地方独立行政法人(以下、独法)に委託できるとしました。

総合的対応不可能に
 窓口業務を切り離すことができるのか。自治労連の福島功副委員長は語ります。「窓口は、住民にとって行政サービスの入り口です。例えば、住民が納税に来た場合、他に滞納がないかを調べ、国保料の滞納があったとすれば、国保料をまず支払うよう助言するなど、一人ひとりの状況を把握し、その実態に即して総合的に対応していく。住民の生活と権利を保障するために、さまざまな施策につなげていく重要な役割があり、切り離すことはできません」
 日本共産党の山下芳生議員は6月1日の参院総務委員会で、母子保健の窓口に保健師や栄養士などの有資格者がついて、妊娠届に訪れた妊婦に短時間でも面接することで、妊婦の不安などをつかみ、支援している実態を紹介。「切れ目のない支援の出発点が窓口での妊娠届の受理だ。そこを切り離して、そこだけ独法に委託してしまったらこうした支援ができなくなる」と批判しました。
 参院総務委員会の参考人質疑では、現業部門の民間委託をすすめてきた富山市の森雅志市長が、「市民との窓口対応部門につきましては直接職員が対応することにしている」「今後もこうした体制をできる限り維持していきたい」と表明しています。
 窓口業務の外部委託は、これまで一部の自治体で民間委託が実施されたものの、破綻してきました。
 東京都足立区では、戸籍事務を民間委託したものの、戸籍法違反や「偽装請負」が問題になり、一部業務を直営に戻さざるを得ませんでした。東京都板橋区では、「偽装請負」を回避するために、民間委託業者の職員との間を仕切りで区切り、申請書類は箱の中に入れてやりとりするなど煩雑になり、非効率だと批判されてきました。

委託の判断自治体ごと
 日本共産党の梅村さえこ議員は5月18日の衆院総務委員会で、独法になれば、なぜこうした欠陥がなくなるのかと追及しても、総務省は答えることはできませんでした。梅村氏は、委託先を民間から独法に変えたとしても、こうした欠陥はなくならないと指摘。「人件費の抑制のためというのが大きな目的だ」と批判しました。
 しかも、独法に委託することによって、独法職員が劣悪な処遇に置かれる恐れも浮上しています。
 独法は、自治体が設立し、運営費交付金を支出して運営されることになっています。人件費の抑制や自治体財政の効率化がすすめられているもとで、運営費交付金の削減による職員の賃金低下にくわえ、非正規雇用や派遣労働者などの雇用も可能なため、「官製ワーキングプア」をさらに拡大させる恐れがあります。独法職員の賃金水準について政府は、労使交渉による決定を原則とし、法律で労働条件を何ら保障しない、無責任な答弁に終始しました。
 窓口業務を独法に委託するかどうかは、自治体ごとに判断することになっています。政府は、「(独法の)設立はあくまで地方自治体の判断であり、一律的に押し付けるものではない」と答弁しています。
 自治労連は、「地方自治体においても、窓口業務を民間に委託したり、地方独立行政法人に行わせることを許さず、自治体の直営での充実と必要な人員の確保を図ることを求め、住民との共同をひろげてたたかう」としています。

*外部委託ねらう主な窓口業務
戸籍
住民基本台帳
マイナンバー
地方税
国民健康保険
高齢者医療
国民年金
介護保険
障害者福祉
母子保健
児童手当など

【「しんぶん赤旗」2017年08月19日付】

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