梅村さえこ-日本共産党党中央委委員・子どもの権利委員会副責任者
子育て・女性

子どもたちの豊かな未来へ社会を変える/梅村さえこ×浅井春夫/新春対談

新聞「新埼玉」1月号より

衆院北関東比例予定候補
 梅村さえこ さん

立教大学名誉教授
 浅井春夫 さん
【うめむら・さえこ】愛知県生まれ。元・日本民主青年同盟中央副委員長。消費税をなくす全国の会事務局長などを歴任し、現在は同会常任世話人。2017年衆院選で北関東比例ブロックから当選(1期)。現在日本共産党中央委員、子どもの権利委員会責任者。 【あさい・はるお】1951年京都府生まれ。日本福祉大学大学院社会福祉学研究科博士課程前期課程修了。調布学園児童指導員、立教大学教授などを経て現職。近著に『戦争孤児たちの戦後史1 総論編』(共編著、吉川弘文館)、『子どもの未来図』(自治体研究社)など。

梅村 2021年、おめでとうございます。

浅井 おめでとうございます。

梅村 総選挙の年。3年前の雪辱を果たしたいと決意しています。消費税をなくす会で32年間活動してきました。政権交代、野党連合政権で消費税5%減税の国会を実現したい。

 また現在、日本共産党子どもの権利委員会の仕事をしています。ジェンダー平等、子どもの権利条約を社会の隅々に根付かせる仕事を国会に戻って何としてもしたいと思っています。

 今日は、「児童福祉論」と(セクソロジジー(人性学)」が専門の先生から、子どもの権利とポストコロナについてお話を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。

浅井 期待しています。よろしくお願いします。

梅村 ちょうど1年前、日本共産党は第28回党大会で綱領一部改定を行い「ジェンダー平等」を掲げました。それを受けて党本部に人権委員会、ジェンダー平等委員会、子どもの権利委員会等の新機構ができました。その第1回目の学習会で浅井先生に「ジェンダー教育と性教育」と題して講演いたたきました。

浅井 1970年代、私か青年期の頃には「民主連合政府をつくろう」というのがスローガンで、今にもできるのではないかという希望を持ちながら取り組んできました。ぜひとも今年2021年、その展望を具体化したいと願っております。

浅井 子どもへの無関心/戦中から一貫
梅村 無関心進むと/憲法違反の先制攻撃に

梅村 先生は昨年、『子どもの未来図』(自治体研究社)、『戦争孤児たちの戦後史1』(吉川弘文館)などの本を出版されました。「戦災孤児」ではなく「戦争孤児」たと強調されています。

浅井 安倍政権のもとで戦争政策が具体化され、菅政権のもとでもほとんど継続されています。改めて、戦争法の問題を戦争孤児の問題から考えてみたいと思って、全国の仲間と一緒に作りました。「戦災孤児」という言葉は、自然災害と同じような響きがあります。戦争によって生まれた子どもたちたということを明確にすべきではないかと思って、そういうタイトルにしました。

梅村 戦争孤児は政府の行為によってつくられたにもかかわらず、一番置き去りにされたということですね。私も「平和のための戦争展」の朗読劇で戦争孤児の話を上演しましたが、「戦争前より戦争後の方が苦しかった」「終戦記念日なんて自分にはなかった」との話に衝撃を受けました。

浅井 戦後史を子どもの問題、戦争孤児の問題で考えてみて改めて思ったのは、政治の子どもへの無関心という問題が、戦中から本当に一貫している。これは人間への無関心が前提であって、障害者、女性、さまざまな生活的な困難を持っている人たちに対しても関心を持っていない。政治の出発点が違うのではないかと思いました。

梅村 「無関心」が進むとどうなるか。河野太郎防衛大臣(当時)が国会で「敵基地攻撃」について、相手国領域内にまで攻め込んで、レーダーやミサイル施設などを破壊し、発射能力を無力化すると答弁しました。憲法違反の先制攻撃です。

浅井 現代の戦争は、市民を殺す戦争です。第1次大戦は死者の9割が兵士・軍属でしたが、第2次大戦は半分くらいたった。ベトナム戦争では、死者の95%は市民です。現行憲法は二人ひとりの幸せが国の幸せである」という基本的な考え方、個人の尊厳ということがベースです。ところが自民党の改憲草案は、「強い国があって、はじめて国民を守れる。少々のことは我慢しろ」となる。どちらの憲法を大切に守っていくのかが問われています。

梅村 安保法制反対のたたかいでは、「ママの会」の皆さんが、「誰の子どもも殺させない」という合言葉で運動をひろげました。日本共産党は戦前から侵略戦争に反対を貫いてきた政党として頑張っていきます。

浅井 日本共産党は人間を大切にする政治を一貫して希求してきた歴史を持っている。誇るべき日本の財産であると私は思います。

梅村 わー。「人間を大事にする政党が日本共産党た」という言葉、本当に嬉しく思います。今、各地で「困った時は日本共産党」と活動をひろげています。先日は、埼玉協同病院、埼玉保険医協会と懇談させていたたきました。医療崩壊が起きかねない現場の状況です。韓国は軍事費を削ってコロナ対策に回しました。日本も今こそ軍事費を削って福祉や教育に回すべきです。

浅井 アジア・太平洋戦争が終わる前年、1944年の日本の国家予算は、「直接軍事費」という戦費が全体の85.3%を占めているのですね。国民のために残りの全部を出したとしても15%足らず。戦争体制はものすごい超貧困社会、それから上から下への号令一下で行う超権力社会たということを意味しています。

梅村 その本質が今も変わっていないことが問題ですね。菅政権は21年度予算で過去最大の約5兆5千億円の軍事費を計画しています。コロナを経験した今だからこそ、軍事拡大競争ではなく、9条の力で平和外交をすすめる政治への転換を実現する年にしたいです。

梅村 コロナによって/一番弱い部分が打撃
浅井 お金をどこに使うか/考え直すことが必要

梅村 さて、先ほどご指摘された子どもへの「無関心」という問題で言えば、最たるものが、安倍前首相による昨年2月27日の全国一律休校要請たったと思います。子どもや学校関係者には寝耳に水でした。デンマークやフィンランドでは、首相自らが「子ども記者会見」を行い、子どもの声を聴き、質問にも直接答えました。子どもを権利を持つ主体として、おとなと同じひとりの人間として尊重しているかどうかがこの違いに表れたと思います。爪痕は大きく、コロナ禍で子どもたちの72%がストレスを抱えています(国立成育医療研究センター調査)。

浅井 国が子どもたちの現実を見ようとしているかどうかです。見るという姿勢がとぼしい中で、内閣の一部が政策を決める。子どもたちに対する無関心が、こういうところにも表れています。

 コロナの広がりで私たちに見えてきたこともあります。分割登校で、クラスを二つに分けて20人以下になると、教員が子どもとすごくかかわりやすく、子どもを見やすくなったという現場からの声があります。これをまた、元の苦しい過剰な競争のクラスに戻すのかということも、実体験を通じて見えてきました。

梅村 同感です。現在の学校の基凖は1クラス40人(小1は35人)です。日本共産党は昨年6月2日に「子どもたちの学び、心身のケア、安全を保障するために学校再開にあたっての緊急提言」を発表し、「20人程度の授業とするための教員の10万人増」を提案しました。国会でも繰り返し質問し、昨年11月13日、畑野君枝衆院議員の質問に萩生田光一文科相は、「30人が望ましい」としながらも、少人数学級を「不退転の決意」で行うことを表明しました。今後予算をつけるかどうかが焦点です。党派を超え、国民皆で手をつないで頑張りたいです。

浅井 もう一つ、デジタルやオンラインでの教育ということが言われますが、今までも取り残されていた子どもたちが、さらに取り残されるという問題が出てくると思うのです。新聞報道などでも「デジタル教育格差」という言葉が出ています。対面式の授業と同時に、リモート式の活動もみんなに保障されるしくみを取らなければいけないと思います。

梅村 NPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」の調査では、ひとり親家庭の36.8%が、オンライン授業を受けるための機器がないと答えています。そのためにいたたまれなくなって不登校になってしまう、という声もあかっていると。

浅井 国は「GIGAスクール構想」などで機器を配布するというのであれば、パソコンなどを持ちにくい子どもたちに優先して配布して使い方を教えるという、もっとも困難な子どもたちに光を当てていく姿勢が必要だと思っています。

梅村 対策が急務ですね。「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」の調査では、コロナによって雇用や収入に影響があったという家庭が実に70%です。もともとひとり親家庭の皆さんは、コロナの前から非常に苦労されていたわけですが、コロナによって一番弱い部分が大きな打撃を受けている。

浅井 政府の統計で見ても、ひとり親家庭、特に母子世帯は世帯の貧困率が50%です。

梅村 学生さんも、コロナで対面授業中止、高い学費、バイトがなくなる、帰省もできない状況の中、日本民主青年同盟の皆さんが埼玉でもフードパントリーをやっていますけど、各地で行列ができるほどだということです。

浅井 世間の人たちが思っている以上に、生活困難な学生たちが多いというのが私の実感です。私か勤めていた大学も、比較的裕福に見られるところですが、そうではない。日本はあまりにも学費が高いという現実があります。OECD(経済協力開発機構)諸国の中でも、教育への公費支出が低いレベルにある。コロナの問題を通して、お金をどこに使うかということを考え直していくことが必要です。今までは、「自己努力が足りない」と言われてきた面がものすごくあるわけです。コロナを通じて、より明らかになった状況で、どうするかという議論を、本気でしてもらいたい。

梅村 コロナ危機のもとで、世界でも日本でも、新自由主義の破綻が明らかになりました。日本共産党は、ポストコロナを展望し、自己責任でなく、人々が支えあう、新しい社会をつくことを呼びかけ、「ケアに手厚い社会」「人間らしく働けるルールをつくる社会」「一人ひとりの学びを保障する社会」などの提案を今行っています。

 保育士や学童保育の指導員などの待遇が、一般会社員よりも平均で10万円以上低い。子どもに安心したケアを充実していくためにも、抜本的な待遇改善を実現していきたいです。

浅井 保育士の労働条件の問題でいうと、改善しなければいけないのは5割が非正規たという点ですよ。今の保育所運営の財政のしくみから言えば、常勤職員1人の給料で3人の非正規職員をやとえる。たたし、運営する側も必然的にそうせざるを得ない状況たと思うのです。労働条件についても、最低基準そのものを見直していくという課題が、コロナの問題でさらに見えてきたと思います。

梅村 保育所の4・5歳児は子ども30人に保育士1人、学童保育は児童40人に指導員1人という、「密」にならざるを得ない国の基準になっているわけですから、しっかりと引き上げる必要があります。

浅井 4・5歳児の「30対1」という基準は、1948年に最低基準を決めた時から一度も変わっていない。そんな国は、世界の中でもおそらくないと思うのです。それくらい、日本では子どものことがなおざりになってきた。自治体が自己努力で加算してきたのが実態です。これもコロナを通じて見えてきたことですが、やはり市場原理で保育所を運営してはいけない。お金もうけと、子どもの命や暮らしや発達とを天びんにかけるようなしくみを採用すべきではないということが明らかになったと思います。

梅村 おっしゃる通りですね。この間も、保育園が突然閉園になって、子どもの行き場がなくなる事例が相次いでいます。子どもの保育が安心して続けられるためにも、権利としての社会保障の確立、安心・安全の認可保育園の大幅増設が必要です。

 ユニセフ(国連児童基金)の先進・新興国38力国の子どもたもの「幸福度」調査では、なんと日本は、「精神的な幸福度」が38力国中で37位です。

 この点でも、自助を押し付ける自民、公明政権を変え、市民と野党の共闘で、野党連合政権をつくらなければと思います。

浅井 幸福度については、一つは教育政策ですね。学校は本来、学ぶ楽しさを味わう場、友たちと出会う場です。それが苦渋としての勉強や、いじめを含めた待遇や環境の中で、この二つの要素が奪われているのではないか。もう一つは地域という人間関係が、子どもを守っていくという点て脆弱化しているのではないか。こうした現実が子どもが未来を描けないことにつなかっていると思います。

梅村 そうですね。働き世代の非正規が増えて、子どもの格差と貧困が広かっています。そして国連子どもの権利委員会は2019年、日本政府の第四回・第五回統合定期報告書に対する総括所見を出しましたが、その中で指摘されているのが、日本の子どもたちが過度な競争主義や差別のもとに置かれているので、それをなくしていくことや、子どもの意見のいっそうの尊重です。

 子どもたちを守る政治と社会を急いでつくらなければ、子どもたちの命、尊厳が守れない。子どもの権利条約を社会の隅々に根づかせていくためにも、国会で「子ども基本法」を制定することが必要と考えています。

浅井 子どもの権利条約は批准され、すでに日本の法律になっていますが、もともと世界に発信したものです。日本の現実に合った「子どもの権利基本法」(仮称)を、子どもたちにプレゼントすることを実現したいものです。

梅村 ぜひ国会で実現できるように頑張ります。

浅井 性教育は/自分の行動決める力
梅村 差別なくすため/対等平等な地域・社会を

梅村 先ほど紹介した日本共産党の提案では、「ジェンダー平等社会をつくる」ことも提案しております。先生は性教育の問題の第一人者として活躍されてきました。性を大事にするということは人を大事にすることだと思いますが、日本では性教育が非常に遅れていると感じます。

浅井 遅れさせてきた一番の問題は、文部科学省の姿勢です。性教育は性的自己決定能力、つまり自分の行動は自分で決定する力をはぐくむということなのに対し、道徳教育は基本的に一定の答えの方に導いていくものです。国は道徳教育と比べて、性教育をできれば遠ざけたいと考えていると思います。また「寝た子を起こすな」論という論理も、戦後一貫してずっと文科省が持ってきた方針というか現状認識です。でも、子どもたちは「寝ている」ような状況ではありません。子どもが自分の人生を自分で切り開こうと思えば、性的な知識とか、人間としてのスキルをはぐくまなければいけないという考えは、世界の大きな流れです。国際的なスタンダードと子どもの実際に沿った性教育政策を具体化できる日本であってほしいと願っています。

梅村 この間、性暴力・性被害をなくすということでは、埼玉でもフラワーデモが広がり、「Me Too」や「With You」の声を広げてきました。

浅井 性暴力の問題はジェンダー平等の問題と重なるのです。日常的な生活や力関係で相手の言うことを拒否できないとか、対等な関係では話せないということがベースにあり、性の問題では主に男性側の一方的な力でねじ伏せていくということが行われている。「ジェンダー不平等がもとになった暴力」という捉え方の中で、根底にある力関係をどう変えていくのかが問われていると思います。

梅村 性差別や性暴力をなくすためには、対等平等な人間関係の地域や社会をつくっていくということが必要だということですね。浅井 まさにその通りです。社会の構造的なところからどう変えていくかということが問われています。

梅村 自民党の杉田水脈(みお)衆院議員が「女はウソをつくから」と発言しました。杉田議員の議員辞職を求める署名を14万人分以上集めたのにも関わらず、自民党は受け取りさえ拒否しました。自民党にジェンダー平等を実現する力はないと感じます。

浅井 自民党の中心的な人たちの体質がかな一元化してきた。菅さんが官房長官の時に、当時の翁長雄志沖縄県知事との話し合いで、「沖縄の問題については、私は戦後生まれたからよくわかりません」という言葉で、論議の流れを切ってしまった。こういう会話拒否の姿勢が、まさに自民党全体の体質になってきたという点に、私は危機感をおぼえています。

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梅村 菅政権の支持率が急落しています。大企業いいなり、アメリカいいなりの政治をたたす提案をしている日本共産党を大きく伸ばしていたたくことが、野党連合政権をつくり、またその政権を安定的なものにする力になります。子どもの笑顔が輝く政治を実現する決意です。今日はありがとうございました。

浅井 ありがとうございました。頑張ってくたさい。

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