梅村さえこ-
国会質問

質問日:2016年 2月 26日 第190国会 総務委員会

外形標準課税の拡大批判 衆院総務委 梅村氏 地域経済壊す

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  日本共産党の梅村さえこ議員は26日の衆院総務委員会で、政府が大企業減税の財源として、所得が赤字の企業にも課せられる外形標準課税の適用拡大を狙っていることを批判し、「地域経済を破壊する危険なものだ」と中止を求めました。

 梅村氏は、外形標準課税適用拡大による中堅企業の負担額について、赤字企業はもちろん、黒字であっても所得1億円以下では1社あたり平均300万円増になる一方、所得10億円超の大企業は同6700万円減になると指摘。「大企業への法人税減税の穴埋めにするうえ、ぎりぎりで頑張っている中堅企業に増税するのは道理がない」と批判しました。

 地域経済への影響をただすと、総務省自治税務局の青木信之局長は「影響を捕捉するのは相当難しい」「大きな影響があるとは考えていない」と繰り返し答弁しました。

 梅村氏は、北関東4県の中堅・大企業87社を対象にした独自試算を示し、全体で4億円の増税になるうえ、増税となる企業の方が従業員数が多い結果になったと指摘。“賃金課税”とも呼ばれる外形標準課税の拡大で、賃金抑制や非正規雇用化がすすむ危険性を強調し、「政府として地域経済への影響を調査すべきだ」と迫りました。

 中小業者への外形標準課税の適用拡大についても、「引き続き慎重に検討する」と否定しない青木局長。梅村氏は「『税収の安定化』と言って、取りやすいところから取るやり方では、内需を冷え込ませ、安定化もない」と強調しました。

【「しんぶん赤旗」2016年2月27日付】

 

ー会議録ー

梅村委員 日本共産党の梅村さえこです。
 まず、外形標準課税の拡大について伺いたいと思います。
 今回の外形標準課税の適用拡大と、地域経済に与える影響について、高市大臣にお伺いしたいと思います。

高市国務大臣 今般の法人税改革は、企業が収益力を高め、より積極的に賃上げや設備投資に取り組むように促す観点から行うものでございます。また、我が国におきましては、一部の企業に税負担が偏っているという指摘もございますことから、広く負担を分かち合う構造としていくことも必要でございます。
 今回の改正におきまして、この法人税改革の一環として、税収の安定性の確保などの観点から、かねてより地方団体から要望いただいていた大法人向けの外形標準課税の拡大を、法人事業税の所得割の税率引き下げとあわせて行うことといたしております。
 これは、法人事業税の応益性の強化ですとか、税収が安定的で偏在性の小さい地方税体系の構築に資するという大きな意義を有すると考えております。
    〔委員長退席、坂本(哲)委員長代理着席〕

梅村委員 先日の総務委員会でも、大臣から、外形標準課税の拡大についてかなり突っ込んだ御答弁があったかと思います。
 そのときも、今もそうですけれども、赤字法人の税負担増という問題は生じるというふうにされながら、今回の法人税改革は、企業が収益を高めて、より積極的に賃上げや設備投資に取り組むよう施す観点から行う、また、赤字とか収益力の低い法人でも、業績が向上していけば今回の改革によって税負担が軽減される、これらのことをこの間御答弁いただいていたかというふうに思います。
 そこで、一点だけさらに御確認させていただきたいんですけれども、先日のこの委員会でも、この外形標準課税について、今後、資本金一億円以下の中小企業にも広げていくお考えなのかどうか、この点を確認させていただきたいと思います。

青木政府参考人 お答え申し上げます。
 外形標準課税の対象法人につきましては、これまでも大臣から答弁申し上げておりますけれども、与党の大綱に書いてありますように、引き続き慎重に検討していくということでございます。

梅村委員 つまり、否定はされていない、慎重に検討していくということだと思いますけれども、やはり中小に与える影響は大きいと思いますので、これはやはりやるべきではないということをここで訴えさせていただきたいというふうに思います。
 特に、税収の安定化ということが先ほども言われましたけれども、取りやすいところから取るという、そして、大企業に減税し、今回もその穴埋めとしてこの外形標準課税が拡大されようとしているわけですけれども、このやり方というのは、内需を冷え込ませ、逆に、税収の安定化にも逆行することではないかというようにも考えます。
 そこで、次に確認させていただきたいと思いますけれども、この外形標準課税の拡大について、衆議院の財金の方で我が党の宮本徹議員から質問し、総務省から試算を発表していただきました。資料1ですけれども、課税所得別の増減税額がどんなふうになるのか、その特徴点を簡潔に御説明いただければと思います。

青木政府参考人 お答え申し上げます。
 今回の外形標準課税の拡大によります一社当たりの負担の増減につきまして、資本金階級別及び所得階級別に平成二十五年度の課税実績をもとに機械的に計算をしたものが、お手元に委員から出していただいてあります総務省提出資料でございます。
 簡単に中身をかいつまんで御説明申し上げますと、資本金が一億円を超え十億円以下の法人についてでございますが、所得一億円以下では、約六千社、平均三百万円の負担増、所得一億円を超え十億円以下では、五千三百社、若干の負担減、所得十億円を超えるところでは、約千三百社、平均三千四百万円の負担減であります。欠損法人は、約四千八百社、平均三百万円の負担増、利益法人と欠損法人を合わせた全体で一万七千四百社で、平均百万円の負担減となっております。
 また、資本金十億円を超える法人について申し上げますと、所得一億円以下では、約八百社、平均千七百万円の負担増、所得一億円を超え十億円以下では、約千五百社、平均二千九百万円の負担増、所得十億円を超えるところでは、約二千社、平均六千七百万円の負担減でございます。欠損法人では、千六百社、平均五千五百万円の負担増でございまして、利益法人、欠損法人を合わせた全体で五千九百社、平均百万円の負担増となっているものでございます。

梅村委員 この表、大変わかりやすく総務省の方からつくっていただいたというふうに思うんです。
 全企業への影響はよくとんとんだというふうに言われますけれども、もちろん、赤字企業というのはここで見ても負担増になっているわけです。
 赤いところが負担増で、それ以外は負担減でありますけれども、きょう御指摘させていただきたいのは、赤字企業が増税になるだけではなくて、やはり黒字企業にも外形標準課税の影響が大変大きくあるということが、この表で新しく明らかになったかというふうに思います。
 特に、いわゆる課税所得一億円以下の企業については、例えば中堅でいえば、六千社あるわけですけれども、一社当たりが三百万円の増税になる。そして、資本金十億円超になると、八百社ありますけれども、一社当たり平均一千七百万円の負担増になる。それに対して、今御説明いただきましたけれども、大企業、十億円超の企業で課税所得も十億円を超えるところは何と負担減が一社当たりで六千七百万円にもなるということが、この表からも明らかではありませんか。
 この大企業の法人税の減税の穴埋めのために外形標準課税の拡大が行われるということですけれども、しかも、さらにこの中で、大企業がこれだけ、一社当たり六千七百万円も減税されて、一方で、赤字か黒字かぎりぎり頑張っているところが、この表で一目瞭然ですけれども、中堅でも一社当たり三百万円、こういう増税がかかるということは、大変道理がない話ではないかなというふうに思っているところです。
 それで、確認させていただきたいと思いますけれども、これは全体の数字ですけれども、やはりここは総務委員会ですので、地域経済に与える影響、こういうものを外形標準課税の拡大の中でどう分析し、どう議論されているのか、この点を伺わせていただきたいと思います。

青木政府参考人 お答え申し上げます。
 外形課税におきましては、所得割の税率を下げ、外形課税を拡大し、全体として税収中立で設計をしているということで、平成二十七年度から外形課税の拡大に取り組んできているわけでございます。
 この一つの税制上の措置でどこまで雇用やら経済に影響があるかというのを捕捉するというのは、相当難しいだろうというふうには思っておりますが、そもそも外形課税につきましては、人件費が一定割合以上の企業、これは実は八割の企業に適用されていますけれども、雇用安定控除という仕組みが創設以来設けられておりますし、平成二十七年度の改正では、新たに、一定以上給与を引き上げる企業に対して配慮する所得拡大促進税制を導入しております。
 その上で、中堅企業の負担増につきましては、今回、外形が拡大することに伴います負担増がある場合でございますけれども、軽減する経過措置を講ずることとしておりまして、雇用の安定あるいは負担の変動にも制度の面で相当配慮をしております。
 したがいまして、今回の改正によりまして、雇用や地域経済に大きな影響があるとは考えておりませんが、しかし、二十七年度から拡大をしてきたということでもございます。改正後の税率に基づきます納税の状況、あるいは二十七年度に導入をいたしました所得拡大促進税制の成果等については、可能な範囲で把握をしてまいりたいというふうに考えております。
    〔坂本(哲)委員長代理退席、委員長着席〕

梅村委員 影響がある場合は配慮してこの間いろいろな措置をとってきたということで、具体的にはつかんでいないということだというふうに思うんです。
 ただ、この表を出していただいただけでも、これだけの数の企業が、とりわけ中堅企業が増税になるということがわかっているわけですから、とりわけ総務省の調査において。それで、影響はそんなにない、つかんでいない。これでは、少し、少しといいますか、本当に地域の経済をどうしていくのか疑問に思いますけれども、この表が出ているんですから、影響はなくはないんじゃないでしょうか。

青木政府参考人 お答え申し上げます。
 この表で言う例えば中堅企業が地方の都市で活動していて、非常に資本金が大きい大企業が東京で活動しているというわけではないんですね。東京に本社がある大企業の支店も日本全国にございます。中堅企業もいろいろなところに支店を持って活動しているわけでございます。
 したがいまして、どういう規模のどういう経営状況の企業にどういうような負担増、負担減があるからということが、一律に大都市部と地方部との関係でどうなるかという影響にすぐ結びつくということではないだろうというふうに思っています。
 私どもとしますと、いずれにしても、こうした改正をするに当たりまして、雇用等に悪影響を及ぼさないように、税制としての制度設計の中で配慮をするというのが重要だと考えておりまして、そうした点について、先ほど御説明申し上げたような措置を講じたところでございます。

梅村委員 具体的に調べてもいないのにそういう御答弁というのは、本当に不誠実ではないのか。やはり、現状を分析しないで、そういう対策だとか措置もとれないのではないか。
 私が再三これを聞かせていただいても、分析がないということですので、これはあくまでも独自の私たちの調査ですけれども、きょうの資料の二枚目で、私は北関東選出ですので、埼玉、栃木、群馬、茨城で、いわゆる有価証券発行企業について、三百人以上の企業に限ってですけれども、ちょっとまとめたり調べてみたりもしたんですね。
 このうち、北関東でどういうところがあるのか。大体、対象が八十七社で、茨城で八社、栃木で十六社、群馬で十八社、埼玉で四十五社ということで、総従業員が十九万三千三十六人というふうになりました。
 そして、この下にまとめた結果を書かせていただきましたけれども、今回の所得割の引き下げ、付加価値割、資本割の引き上げを差し引きしてみると、全体として四億円の増税となっています。特に、所得割は百三十五億円の減税に対して、付加価値割は八十四億円の増税、資本割は五十六億円の増税になっていくわけですね。
 特に大事だと思ったのは、差し引き増税になる企業、差し引き減税になる企業に分類してその従業員数を集計していくと、増税になる企業の方が従業員数が多い、十万八千三百八十四人。さらに、従業員の内訳に注目して見ると、正規、臨時職員の比率では正規比率の方が高い、今度増税になるということだというふうに思います。
 これはあくまでも、ないということなので、私たちなりにどういう分析ができるかということを努力してみた結果なんですけれども、やはり今度の外形標準課税は付加価値税の増税であり、従業員の多いところほど増税ですから、外形標準課税が強化された場合、賃金の抑制や一層の非正規化が地方ではかなり強く進む可能性があるのではないかという危惧があるんですけれども、その点はいかがでしょうか。

青木政府参考人 お答え申し上げます。
 まず、先ほど、企業、特に中堅企業の点について注目をされているというふうに伺いましたが、いただいている資料の一ページ目ですけれども、中堅企業全体を見れば、出していただいた資料でも平均では負担減になっているということにも注目いただきたいと思います。
 その上で、人件費等への影響についても御言及がございましたが、外形課税は、付加価値割につきましては付加価値額とそれから当該年度の収益を足しております。
 したがいまして、仮に、何らかの形で収益が上がってきたので、ボーナスなり職員の給与引き上げに使おうということになりますと、人件費部分がふえて付加価値額が計算されますが、収益の方がその分マイナスになりますので、全体としては変わらないということになります。逆に、人件費を下げて利益を多く出しても、実は変わらない。
 そういう意味で、そもそも人件費との関係では、中立的な設計が付加価値割についてはなされているということでございます。
 その上で、先ほど申し上げましたような雇用安定控除、人件費の割合が一定程度多い企業に対する配慮、それから実際に給与を引き上げた企業に対する配慮もしているというところについて、御理解賜りたいと思います。

梅村委員 質問は、地域経済にどういう影響を与えるのかということを質問しているのであって、御主張を繰り返されるというのは誠実に答えていただいていないというふうに思います。
 それで、一枚目の表に戻って今御答弁いただいて、差し引きしても負担減だと言いますけれども、私は、そもそも、黒字か赤字かぎりぎりのところで努力して、もう少しで抜け出せるような方々に対して、こんな三百万円も増税するんですかということを言っているんですよ。数字の机上のすり合わせなんかで、実態、地域の企業の方々はやっていないわけで、そこの苦労をどう見ていらっしゃるのかということを言ってこの表を出しているのに、もとに戻って、差し引きとんとんで減税ですなんということは、やはり答弁としていかがなものかなというふうに思います。
 先ほどの影響がないということも、それは税率が変わらないときにはそういうことがあるかもしれませんけれども、付加価値割と所得割のところでそれぞれ利益が入る中で、所得割では減税、付加価値割では増税となるわけですから、それは今後増税を前提にした場合には影響が出るという、大変なすりかえのことを言っていらっしゃると思います。
 これは、経団連さん自身も外形標準課税は賃金課税だということを言っているわけで、そこをしっかりと見て、地域の中小企業の皆さんに本当にどういう影響があるのかということを深刻に、重大に捉えてこの外形標準課税の問題はやらなければ、地域経済は破壊してしまう、そんな議論でこれを進めるというのは大変危険ではないかなというふうに私は思っているところです。
 地域経済の問題でいうと、先ほど御紹介した上に、私自身、例えば、増減税で増税になる企業、北関東で二十社を調べてみたんです。そうすると、トップ二社というのは電器のいわゆる大規模小売店が続いておりますし、あと、北関東は自動車の部品メーカーが大変多い状況があります。
 例えば、そこを見ていきますと、桐生で、自動車メーカーなんかでありますけれども、そこの会社というのは正職員を地域で三千九百八十二人雇用しているんですけれども、そこは付加価値割による増税によって一・四億円の増税にもなっていくわけですね。そして、群馬に本社のある電器の会社でいっても、付加価値割だけで十一億円の増税になっていく。そういう調査を私たちもさせていただきました。
 この付加価値税への増税ということを見ますと、これはやはり賃金、そして正規から非正規への影響はなくはない、調べれば調べるほどそういうことを思うわけですよ。
 ですから、きょうはそれを指摘させていただきつつ、総務省として、そういう調査をもっとすべきじゃないでしょうか。外形標準課税でどういうふうに地域の企業に影響があるのか、どの地域にどういう影響があるのか、それをせずして、大企業の法人税の減税の財源のために拡大していくというのは余りにも安易なやり方で、地域からGDPを押し上げるということとは逆行するのではないかなというふうに思います。いかがでしょうか。

青木政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど委員はお話の中で中小企業という言葉も使われたので、中小企業については、先ほど冒頭申し上げましたが、与党の大綱に書いてあるように、対象法人については慎重に検討するという立場は変わっておりませんので、それを前提にしつつでございますけれども、この外形の対象となっている法人について、外形課税を拡大することによってどういうような企業がどういうようなことになるだろうかというのは、それはそれなりに分析はできるわけでございます。所得がこのぐらいあれば結果こうなりますね、それはわかるわけでございます。
 問題は、その一つのことをもってある地域の経済にどういう影響がというのは、それをどうやって分析するのかというのは、そこは、ある企業に係る税制上の措置がその当該企業に影響することはもちろん税制としてはありますけれども、それ以外に、グローバルな環境なりいろいろな環境も含めて当該企業の企業行動というのに影響されるわけでありまして、そういうことも含めて地域経済に影響していくというわけでございます。
 したがいまして、外形課税の制度の改正が地域経済にどういうような影響を及ぼすかということを、相当遠い距離がある話であるわけでありますから、その直接的な結果を分析するというのは難しい、困難だとは思います。
 したがって、こういうような税制改正をさせていただく以上は、そのことの影響ができる限り及ばないように、問題がないような解決策を考えなければいけないという中で、実際に、所得割は下がるけれども外形課税は拡大をする、この改革の中で、負担がふえる企業がございますから、その負担がふえる企業に対しての措置については、経済界からの御要請なり経産省からの御要請を受けて、経過的に軽減措置をする、かなり思い切った軽減措置も講じているわけであります。
 そういうことで、我々としては、今後は、この税制を改正した結果、それぞれの企業がこの税制のことでどういうような状況になっているのか、所得拡大税制がどういうように措置されたというふうになっているのかということを分析していくという立場だろうと思っております。

梅村委員 分析していないということだというふうに思います。ですので、地域経済に与える影響をしっかりと議論しなければ、慎重だとはいっても、さらに拡大を検討しているということですから、私は、やはりしっかりと分析していただきたいということを求めたいと思います。
 この北関東だけではなくて、全国的にちょっと調べてみましたけれども、東京や愛知に大企業の本社があるところは減税という傾向がありますけれども、北関東だけではなくて、九州や沖縄や北海道や東北など、地域ごとに見ていきますと、やはり地域に行けば行くほど大変厳しい状況もあるということも調査で感じておりますので、ぜひそこら辺は分析をしていただきたいというふうに思います。
 では、次の質問に移りたいと思います。

ー配布資料ー

外形標準課税配布資料①

外形標準課税配布資料②

 

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