梅村さえこ-

日本の消費税は世界一の国民いじめ イギリス・デンマークを訪ねて

 梅村早江子さん(消費税をなくす全国の会の事務局長)は4月、イギリスとデンマークを訪ねる「税と社会保障ウオッチングツアー」(同東京の会主 催)に参加しました。新宿区内で12日に開かれた「報告のつどい」で、「訪問先で、日本の消費税5%は今でも世界一の国民いじめの税金だと実感した。その 上に10%の消費税などとんでもない」とのべています。欧州ツアー体験に基づく消費税の問題点を聞きました。

ツアーにはどんな考えで参加されたのですか。

 活動していると「日本の消費税は世界に比べて低いのだから、値上げもしょうがないのでは」といった質問が、必ずといっていいほど出されます。そこで実際に目で見る機会はそんなにないし、これからの運動にも役立てたいと、思いきって参加しました。

2カ国を選んだのは。

 この2カ国は、付加価値税(日本でいえば消費税)が、対照的だからです。イギリスは標準税率が17.5%ですが、食料品は消費税がかかりません。デンマークは、「国民の幸福度世界一」といわれる国ですが、標準税率は25%で、同じ税率が食料品にも一律にかかる国です。

初日はデンマークのコペンハーゲンでしたね。

 コペンハーゲンで500ミリリットルのミネラルウオーターを買ったのが、西欧の付加価値税に接した最初でし た。買ったレシートには「VAT25% 22クローネ」とありました。VATは日本の消費税にあたるものです。日本円に換算すると374円(1クロー ネ=17円)。「え!高い。日本なら150円くらいなのに」と思いました。その他の商品をみても、日本の物価より2割から3割は高い。この物価高をどう考 えたらいいのか。そんな模索のなかでツアーが始まりました。
 その後、デンマーク在住40年のツアーコンダクターから講義を受け、元高校の校長で年金暮らしの夫婦の自宅や高齢者活動センターなどを訪問し、街なかで 市民と対話を進めました。イギリスでも、税制と社会保障に関する講義を受け、商店や街の声も聞きました。このなかで、私が最も衝撃を受けたのは、最低賃金 の話でした。

といいますと?

shouhizei_tour02 デンマークは、同一賃金で、最低賃金(時間給)は全国一律2,200円、ロンドンは1,450円でした(表)。東京の最低賃金は791円です。格段の違いに驚きました。そこで、最低賃金と500ミリリットルの水の値段を比べてみました。
 そのペットボトル1本の値段は、東京が150円、ロンドン152円、コペンハーゲン374円として、最低賃金で買える本数を計算すると、東京は5.27 本、ロンドン9.54本、コペンハーゲン5.88本です。「日本は、5%の今でも25%のデンマークと遜色のない負担になっているのではないか」と、思い ました。

所得が高ければ、負担感も少ないわけですね。

 そうです。消費税は内税化され、今や価格の完全な一部です。ですから可処分所得を比べ、家計のなかで自由に使えるお金がどれぐらいなのか、生活のまるごとのなかでの税金、消費税を見比べることが欠かせないと、思いました。

日本は教育や医療など負担が高いですからね。

 コペンハーゲンでの講義によると、教育費、医療費はむろん無料ですが、その徹底振りを感じたのは、国が行う家計調査の支出項目には「教育費」の項目がないということでした。
 元校長先生は、大学まで学費は無償で、親の経済的な問題で機会均等が損なわれることは皆無だと話してくれました。日本では、年間数百万円を超す大学などの学費にあえいでいます。

医療面はどうでした。

 イギリスもデンマークも無料ですが、貴重な体験をしました。ロンドンでは訪問団の一人が、寝込むほどの下痢 で、総合病院の外来で受診しました。血液検査と点滴、3日分の薬が出ました。「では支払いを」と思っても会計窓口がないのです。医療費は外国人まで無料だ からです。医療費が無料の安心感はとても大きいと実感した一幕でした。

子育ては。

 デンマークでは、労働者が大事にされていることですね。失業保険、出産・育児休暇の手厚さには驚きました。 失業保険は縮小されたとはいえ、4年間支給され、フルタイムの労働者だった場合は、日当1万5,040円、自営業者も失業した場合、労働者と同額の日当が 出るという講義を受けました。訪問団はため息の声をあげるしかありませんでした。
 女性の就労率73.4%にみられるように出産・育児のサポート体制も手厚く、出産後14週まで給与は勤務先から全額支払われ、その後は、国庫から最高年間280万円が支給されるということです。

「幸福度世界一」というのもうなずけますね。

shouhizei_tour01 このような中での消費税25%と、何でもかんでも「自己責任」「自立自助」が迫られる日本の暮らしのなかでの5%の消費税を比べると、「欧州に比べて低いから上げる余地がある」(白川方明日銀総裁の発言)なんていえないことは明らかではないでしょうか。
 欧州の教育、社会保障制度を支えているのは、消費税が「高い」からではないのです。税率が日本より4倍も高いフランス、イタリアでも社会保障財源に占め る消費税の割合が、日本9%に対し、フランス4%、イタリア8%です。デンマークのあるお店で「デンマークは消費税が高いといわれますが、実は直接税が中 心の国なんですよ」といわれたことは大変印象的でした。欧州の社会保障は応能負担の税制や大企業の負担で支えられているんですね。日本の大企業の負担はフ ランスの7割程度です。

一般市民は、消費税についてどんな感じを。

 私がお話した方で、家庭でどれくらいの消費税を負担しているか知っている人は一人もいませんでした。イギリスでは、食料品がゼロ税率ということもあるでしょうが、消費税は、知らず知らずのうちにとられていく税金であるという本質はどこの国でも同様だと思いました。
 だからこそ私たちの会や各界連があり、消費税の問題点を告発し、5%アップまで8年間、5%アップから今日まで、13年間あらたな税率アップを食い止めてきました。活動への誇りを感じて帰ってきました。

菅政権は、「消費税10%」を言明しました。

 消費税は5%で4人家族で、年間約17万円の負担ですから、10%なら34万円の負担です。この負担増にど れだけの家庭が耐えられるというのでしょうか。それも法人税減税とセットです。法人税減税の穴埋めのための消費税増税などとんでもない話です。草の根で対 話、宣伝を広げて、一人でも多く「増税ノー、暮らしに税金をかけるな」の議員、政党を国会に送り出したいと思います。

(『東京民報 2010年6月27日付』より転載)

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